前回の記事では、バジルの栄養素や効能について紹介しました。この記事ではバジルの育て方について紹介します。適切な土、肥料、水やりのタイミングなどの基本的な情報から、摘心や切り戻し、冬越しのやり方など、家庭菜園だけでなく、直売所に出荷できるレベルでの情報を紹介します。
バジルの品種
バジルの品種はたくさんありますがこの記事では2種類、おすすめしています。
スウィートバジル
1つ目はたくさん収穫できて最もメジャーな品種の【スウィートバジル】です。バジルといったらほとんどがこのスウィートバジルを指すほど人気な品種ですが、この品種はたくさん収穫できる、種・苗が安いのでバジルペーストを家で作る方、バジルを販売される方向けの品種です。
ブッシュバジル
2つ目は、葉っぱの大きさがスウィートバジルの10分の1くらいの大きさの【ブッシュバジル】です。ご家庭でちょこっとだけバジルがほしい方向けですが、一番の特徴は寒さに強いため冬越ししやすいことです。強い耐寒性と草姿が小さいのでプランターで栽培すれば、冬場は室内へ移動することで冬を越えられます。
量は取れませんが、見た目がかわいらしいので観賞用としても人気の品種です。
バジルの育て方
バジルは長期間収穫するため、肥料をたくさん消費する野菜です。そのため、プランターでバジルを育てる場合は新品の培養土を購入しましょう。また、追肥するのがめんどくさい、追肥のタイミングがわからないという方は、【タキイの培養土】など、少し高めの培養土を購入することをおすすめします。これは培養土そのものにゆっくり効く、緩効性肥料というものがたくさん含まれていて、さらに根張りがしやすい土壌状態を確保するような配合になっているためです。
培養土、プランター、畑、バジルの種もしくは苗の準備が整ったところで、バジルの育て方の説明をします。
バジルの育て方①種まき
バジルの発芽温度は20℃なので、3月下旬から種まきができます。ただ、日中は暖かくても夜中や早朝の気温が低い時期には要注意です。その場合は、種をキッチンペーパーなどで浸したものを1週間ほど室内で管理するなど発芽環境を整えましょう。
早く収穫しなくてもいい、という場合は4月中旬以降の暖かい時期のほうが発芽率がグンと上がります。
バジルの育て方②植え付け、植え替え
バジルは寒さに弱い植物のため、屋外で管理する場合は早植え厳禁です。10℃の気温や風に当たると葉っぱが黒ずんでしまい、そこから腐ってしまいます。植えつける場合は十分に暖かくなってきてからにしましょう。
また、植えつけ直後は十分な水とたっぷりの日光が必要です。植えつけ直後の成長はとても重要で、この時期にストレスがかかってしまうと後の生育に大きく影響するので注意しましょう。
バジルの育て方③摘心
葉っぱが10~20枚、草丈が20センチほどになってきたら主枝(中心の枝)の先端を摘む【摘心】をおこないましょう。摘心を繰り返すことで、上(主枝)へ伸びようとする力が横(側枝)に分散され、わき芽がどんどん出てきて株が大きくなるため、たくさん収穫できるようになります。
プランターでのバジルの育て方
プランターで育てる場合、注意点としては畑に直接植える場合と同じです。バジルの根っこは肥料を吸う力がとても強いため、小さいプランターでも十分立派な姿のバジルが栽培できます。もちろん、プランターのサイズは大きければ大きいほど良いですが、小さいものでも大丈夫です。
バジルの増やし方
バジルは暑さの盛りが来る前の7月中旬までは、挿し芽(挿し木)という方法で増やすことができます。挿し芽とは、摘心した枝を水に挿しておき、根っこを生やしてから、土に挿して新しい株として育てる方法です。この時の注意点として若い葉っぱを4~6枚ほど付けておくこと、発根が肉眼で確認できるまでは水を切らさないことです。
葉っぱをたくさんつけた状態のほうがよさそうな感じがするのですが、葉っぱには【蒸散】といって植物体内の水分を外に放出する働きがあります。発根させようとする状態のものではこの蒸散の量を抑えたいので葉っぱのつけすぎには注意しましょう。逆に葉っぱが全くない場合、光合成をするのが難しくなってしまうため、葉っぱの枚数は少なすぎても多すぎてもいけません。葉っぱの枚数、日差しの強さ、水分量など気を付けなければいけないことはたくさんありますが、たくさん摘芯すれば元の株も大きくなるので、たくさん摘芯してたくさんトライしてみてください。
バジルの生育診断 肥料 葉っぱの色
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バジルは自分の状況を表現するのが上手な野菜です。バジルの葉っぱを見れば何が必要か、何が過剰かを教えてもらえます。
・葉っぱの反り具合
・葉っぱの色
スウィートバジルの例で説明します。新芽から数えて10枚目くらいの葉っぱを見てください。葉っぱの厚さは肉厚で、ベローンと、葉先が地面を向き、弧を描くような状態で、葉っぱの色は明るめの黄緑色が健康な状態です。
葉っぱが空に向かって反っている場合。これは主に水不足が原因です。ただ、水不足だからといってすぐに水をあげても治りません。バジルが1回に給水できる量には限りがあるため、数回に分けて、何日間か継続して水をあげましょう。
バジルの葉っぱの色が濃い緑の場合。これは肥料のやりすぎです。大量の水で流すか、根元から10~15センチのところで刈り込む【切り戻し】という作業をしましょう。肥料が多い状態だと虫を寄せ付けやすく、病気にかかりやすいです。1株だけでも病気にかかるとそこから伝染して被害が拡大してしまうので早めに対処しましょう。
バジルの葉っぱが黒ずんでしまう場合。バジルは寒さに当たると黒ずんでしまいます。育てているすべてのバジルが黒ずんでしまっている場合は、そろそろバジル栽培の終了の時期ですが、特定の場所のものだけ黒ずんでいる場合、そこにだけ強い風などが当たっている可能性があります。その場合は不織布で覆うかビニールトンネルをかけるなどの対策をしましょう。
バジルの害虫 農薬散布のコツ
バジルの害虫被害は6~7月が多いです。この時期は湿度が高く、気温も暑すぎないため、虫にとっては一番活動しやすい季節であるためです。
主な害虫はアブラムシ、ハダニ、アザミウマが発生します。これらの虫は繁殖するスピードは早いですが、ヨトウムシやアオムシと比べて食事のスピードは遅いので、即全滅という心配はありません。
また、最高気温が30度を超えるような夏の盛りになると、著しく活動スピードが鈍るので、薬剤散布をするのならその弱った時期に狙い撃ちすれば少ない散布量で効果的に駆除できます。
農薬の散布を極力抑えたい方はこれらのことを頭に入れて、農薬散布回数の最少を目指す、効率的なタイミングは以下の2つです。
1点目は苗がまだ若い5月中に予防目的で農薬を散布する。
2点目は6月の大量発生時期をやり過ごし、7月下旬に殺虫剤を散布する。
農薬は発生してから散布しているようだと後手に回ってしまい、害虫の繁殖スピードに負けてしまうことや、害虫に農薬の抵抗性がついてしまうことがあります。そうならないための早め早めの対策をおすすめします。
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バジルの収穫時期
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葉っぱが10~15枚で草丈20センチほどになったら、収穫してみましょう。収穫するときは常に株と収穫量のバランスを気にしましょう。葉っぱが10枚以上、気温が20℃ほどを確保できていればバジルはすくすく成長していきます。葉っぱが多ければ多いほど光合成をするため、成長するということを忘れないようにしながら、5月ごろからどんどん収穫していきましょう。
また、バジルは早いものだと7月ごろになると花を付けます。花を付け始めると栄養が葉っぱではなく花へ行くので葉が固く、不味くなります。長期間収穫したい場合は花のつぼみを付け次第、摘んであげてください。また、土壌の栄養分が少ないとバジルに限らずすべての植物は生命の危機を感じ、花や種を付け子孫を残そうとする働きがあります。思っていたより早めに花を付けた場合は肥料がたっりなかった可能性があります。毎日観察していると花を付ける直前の変化に気づくことができるので、「花を付けそうだな」と感じたら液肥を上げるのもひとつの手です。
バジルの冬越し、冬場の管理
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「バジルは冬を超えられない」とよく言われていますが、実はそんなことはありません。もちろん、通常通り種の袋の裏に書いてある栽培方法では冬越しはできません。
その理由として主に3つあります。
1つ目として、バジルは冷気に当たると黒ずんで傷む。
2つ目として、バジルの生育適温が20℃以上。
3つ目として、バジルの株自体の寿命が3、4ヶ月。
これらの理由があります。
つまり、冬場の冷たい風に当たらなく、人間が寒いと感じにくいところで9月ごろに種まきすれば冬を超えられます。
プランターや鉢で日差しの当たる室内に移動させて育てることができます。ポイントとしては種まきの時期を8月、9月といった遅い時期にまくことです。冬場なのであまり葉っぱは大きくなりにくいですが、夏場とはまた違った味や見た目が楽しめます。
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バジルの経営的観点
バジルは種代が安く、万が一種まきに失敗しても苗を買えばいいという点、バジルの需要がすごくある点、収穫が容易な点から家庭菜園でも直売所出荷を狙える野菜だと思います。
バジルは新芽を摘めばどんどん出てくるため、筆者の地域では1袋60グラム~100グラム入り、100円から150円で販売して1株、ワンシーズンで1500円~ほど狙えます。
畑一面バジルにすると販売先探しが現実的ではありませんが、畑の一区画、貸農園での1畝といったちょっとしたスペースで稼ぐ野菜としてはとても魅力的な野菜だと思います。
バジルのコンパニオンプランツ
コンパニオンプランツとは
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%84
コンパニオンプランツ(または共栄作物、共存作物)とは、農学や園芸学において、近傍に栽培することで互いの成長によい影響を与え共栄しあうとされる2種以上の植物の組み合わせ、またはそれらの植物のこと。コンパニオンプランツを2種類以上、近傍に栽培することを混植または混作と呼ぶ[1]。
バジルと相性のいい野菜はトマトです。水分が大好きなバジルと、水を控えることでうまみが増すトマトを近くに植えることでお互いの食味が増すだけではなく、トマトにつきやすい害虫(コナジラミなど)をバジルが忌避する作用があります。
因みに、料理としての相性もいいトマトとバジルですが、イタリアでは「バジルを植えた鉢を持たない主婦はいない。」といわれるほど、バジルの栽培が定着しているそうです。
まとめ
ここまで、バジルの育て方について紹介しました。バジルの育て方で覚えておきたいことは、
☆摘心のタイミング
☆挿し芽、挿し木で増える
☆水の管理
です。特に下に2つだけ覚えていれば、いくら失敗しても取り戻せるので是非覚えておいてください。
栽培自体がとても簡単ですが奥の深いバジル。このバジルを上手に育てることで野菜を観察する力(肥料のタイミングや水のタイミング)がかなりつくと思います。ぜひ一度育ててみてはいかがでしょうか。