東大卒、農家の右腕になる。の書評
 園主 園主

まるで、ルーキーズの農業版のような改善ドラマです。

今回は佐川友彦著【東大卒、農家の右腕になる。】の書評です。

この本の真逆のことをすると失敗できます。

明日から役立つ改善集&改善の順番がリスト化され、ドラマ仕立てで理解できる一冊です。

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東大卒が阿部梨園へインターン

著者は佐川智彦さん。東大卒でデュポン→創業期のメルカリといったバリキャリの経歴の持ち主。阿部梨園での一コマでイラストレーターをゼロから学んでデザイン担当になったという効率より行動力が上回る場面も見受けられますが、本書全体を通してとてもロジックに感情がこもっている方です。

最速の改善|農家の改善は他業種他分野でも応用できる

ひと言でいえば、農家を改善する実話。

転職を経験したことがある方ならわかるかと思いますが、ぽっと出の新人君が急に改善!改善!って推し進めていくのは骨が折れる思いです。入社してまずは商習慣や社内のしきたりになれる時間が必要。自分はドラマの主人公だ!と言わんばかりにあれはおかしいこれはおかしいと正論を続けると「言っていることは正しいが、協調性のないヤツ」のレッテルが貼られ出世から遠のく。郷に入っては郷に従えで受け流していくと半年もすれば疑問や課題がだんだんと見えなくなってしまう。

改善にはそんなジレンマがあります。

また、改善の第一歩でよく思い浮かぶのが無駄の削減。電気を消したり、消耗品を見直したり。これは改善としては成立しているのですが、費用対効果がとても悪いです。時給1500円~3000円の人間が消しゴム1ついるかいらないかに脳みそを使っているのですから。

本書は改善例を挙げるにあたって特に改善の順番に重きを置いているように感じました。売り上げ当たりインパクトが大きいところから改善するのでもなく、いきなり社内全員巻き込んで革命を起こすのではなく。粛々とした当事者意識を弱火で、しかし鋭く燃やし続けるのです。

「内部改善を進めるだけでは私の給料は捻出できません。売り上げアップが必要でした。」

改善するぞ~と腕をぶんぶん回している方はぜひロジックに落とし込んでほしいですね。

視座を広げる具体的な方法

本書は改善するにあたって、畑を効率よく回す、のような改善方法はとても少ないです。

販売促進や広告、バックオフィスの改善TIPSが豊富に描かれているので農業以外の業界にも応用できる内容です。畑から見た視点、畑を離れた視点、農業界全体から見た視点と視座がただ広いだけではなく、いろいろな視座を行ったり来たりする感覚。畑作業とそれ以外のように農業は視座を行ったり来たりしやすい職種だと思えます。

第2部の経営改善ノウハウ100では経営、総務、会計、労務、人事、生産、マーケ、セールスの各分野のTIPSが盛りだくさんです。