今回は「農業崩壊」についての感想です。ポイントは2点です。
・あのニュース、本当のところどうなの?
・農業を複合的に見て見ると…
農業のイメージのズレを解説
作者は「農は甦る」「コメをやめる勇気」などでお馴染みの吉田忠則さん。
日本経済新聞社編集委員の肩書のとおり、とにかく現場取材力がスゴイ一冊です。
本書の論点は”一般的な農業のイメージと実態の差異”。
これを3つの論点から展開しています。
小泉進次郎の農政
本書は2018.9月初版です。
小泉進次郎人気が日に日に高まり、自民党農林部会長となりました。
全農(JA)との戦いをを繰り広げ、日本を救うヒーロー進次郎VS陳腐化した悪の組織JAの構図は皆さんの記憶の片隅にあるかと思います。
ある層からは「改革の旗手!」「未来の総理!」などと絶大な支持を集め、反対の層からは「進次郎は農業の何もわかっとらん」と叩かれ賛否両論のこの一件。
改革は実際にどこまで行われたのでしょうか。いや、そもそも全農って何の組織?本当に悪なの?などといった点を検証していっています。
植物工場|儲かるところと撤退していくところの差
植物工場は遅れた農業界にパラダイムシフトを起こす革命的な技術だ!との盛り上がりVS瞬く間に赤字垂れ流しもしくは経営破たんする企業の構図。
赤字化した「その他大勢」の共通点をあぶり出し、ごく一部の黒字化に成功した企業に秘密を探る章。
ビジネスだけではなく、行政と研究とビジネスが混沌とした植物工場。
ファーストペンギンの苦悩も垣間見えます。
イオン、エア・ウォーター、トヨタから学ぶ農業の企業参入
最後の章は定番の企業参入です。
ニチレイや吉野家が撤退した事例を紹介し、なぜ撤退したのか。本当は農家ってスゴイんだ。と思わせる一幕も。
企業参入の成功事例としてはイオン、エア・ウォーター、住友化学、トヨタが挙げられています。
そして最後には九条ネギの「こと京都」と農業法人の草分け的存在「サラダボウル」のお話し。
どんな戦略でどう大きくなったかの過程がまとめられています。
なぜ失敗したかなぜ成功したか。
イメージとどう違うかがわかるおすすめの一冊です。