農家になるには? 準備編~経営計画~

この記事は

新米ファーマー新米ファーマー

脱サラして農家になりたいけど、何からしたらいいかわからないよ。小さい規模からこつこつ始めてゆくゆくは売上1000万円を目指したい。

という、農業初心者だった過去の私のような方へ向けて書いています。

大規模農場、契約出荷ゴリゴリ回すぜ!というすでに志の固まっている方はご遠慮ください。

 

農家になるための準備

【就農(=農家になる)までの道のり】として、必要なものは3点あります。

農家になるための準備

1.土地の確保
2.経営計画
3.栽培技術

この3点が必要になります。

土地の確保についてはこちらをご覧ください。

 ‎この記事では

2.経営計画

にフォーカスをして説明していきます。

新規就農者向け 経営計画の基本的な考え方

management plan

今のお仕事などで新規事業計画やプロジェクトを運営した経験のある方には当たり前すぎて読む必要のない項目です。

就農したい、野菜を売って稼いでみたいけど何からすればいいのかわからない、という方へ向けて、最低限これくらいは考えましょう。というお話です。

 

経営計画に最低限必要な項目

・栽培作物
・商品単価
・10アール当たり収量
・経費

 

これらの数字の集め方は種苗メーカーが出している種のカタログ、役場の農政課や地域の農業普及課へ行くと、このあたりの数字が集まります。

web検索でもよいのですが、地域ごとに数値がばらつきますので、初めは就農する地域の情報を集めるのが良いかと思います。

集める数字の例は以下の通りです。

例えば愛知県キャベツ市場出荷の場合

単価150円、面積10アールだとすると栽培個数はおよそ10,000本になるため想定売り上げは400,000円、経費は農薬代、種代、段ボール代、ガソリン代等から合計すると50,000円から100,000円位でしょうか。

そこから人件費を引けば利益が算出できます。

変数は単価、経費、作付け面積となります。

市場出荷ではなく、独自の販路(量販店を開拓、個人宅配など)なら、単価を上げることが可能です。

また、農薬の使用量や種や資材の入手ルートによっては経費を下げることもできます。

この際、一番重要なのは作付け面積と収量の見込みを出し、その量をさばける販路を確保することです。

たくさん生産しても売れなければお金が1円も入ってきません。まずは売り切れる量を生産し、売り切りましょう。

 

農業におけるマーケティングの視点

経営計画について、もう少し踏み込んでいきます。

新規就農者が誤解しやすいのですが、「いい商品を高く売る」といった目標では売り上げの数字をあげきれません。

農業におけるマーケティング視点

・何を
・いくらで
・誰に販売するか

 

売上をあげ、経営的に安定するには

「何を/いくらで/誰に届けるか」この3点がカギとなってきます。

ちなみに私はこの本を参考にしました。

 

何を作るか

「何を」とは、例えば露地でキャベツを作るのか、ハウスでほうれん草を作るのか、水耕栽培でトマトを作るのかを選択することです。

自分が単純に好きな野菜でもいいですし、地域の名産品に被せるでもいいです。自分の得意なこと、周りの環境、資本力などをバランスよく加味することが大切です。

また、ココでの決定はあくまでも仮決定になります。露地でキャベツを作ると決めたら、ハウスで葉物野菜を作ってはいけない、なんてことはありません。

露地とハウスのバランスや得意先との関係で臨機応変にいきましょう。

作物の選定に話を戻します。

露地野菜で規模拡大を狙う場合。

この考え方は一番オーソドックスです。

はじめに、主要作物を決めます。ここでは仮に、キャベツとします。

作物を決めたら、出荷時期を決めます。キャベツは種苗メーカーさんの開発が進んでいるため、ほぼ周年出荷できるためです。

時期を決める時は何となくで決めるのではなく、作りやすい時期を選んで計画しましょう。

いくらで売るか

これは当然の話ですが、一般的に作りやすいとされている時期は、販売価格が安くなりがちです。需要よりも供給が上回っているためです。

自分の栽培スキルと希望する価格、畑の空き状況をバランスよく加味しましょう。

メインの栽培作物と栽培時期を決めたら、サブ野菜を決めます。

ここでは仮に玉ねぎをサブとします。メインの作物をキャベツ、12-1月収穫と決めます。1月中に収穫を終え、畑を整備して、1月下旬-2月に玉ねぎを定植します。晩生品種の場合、6月ごろ収穫となり、8月以降にまた冬のキャベツの準備ができます。

このように畑をどう回すか、パズルのように考えると、必要な資材や機械、面積、出荷先がだいぶ明確化されてくると思います。

誰に販売するか

上記の例は1年を通して市場出荷されている方によく使われている例ですが、他にも、キャベツ冬作をメインに、それ以降は道の駅や直売所出荷のように時期ごとで出荷先を変える例もあります。

市場出荷と直売所出荷では売れ筋品種や価格帯、梱包の仕方が異なります。

販売先に応じて一番価値の上がるパッケージを考え、収入アップを目指しましょう。

市場出荷×直売所出荷のような組み合わせは無限にあるので、自分に合ったやり方を見つけましょう。

単価を上げる時期ずらしの作型

旬の野菜は作りやすく、栄養も豊富です。

しかし、栽培しやすいだけあって値段が安くなりがちです。

特に直売所に出荷する場合は家庭菜園の方も出荷するため、夏場のキュウリや冬の白菜は値下げ合戦になってしまいます。

そこで、旬のど真ん中ではなく、少し早め、少し遅めに出荷することで販売価格を上げる時期ずらし出荷がおすすめです。

ハウスがあれば加温なしで5月にきゅうりを出荷したり、真冬に葉物野菜を出荷し続けたりできます。

ハウスがなくてもマルチによって地温を確保すれば、早出し・遅出しが可能です。

 ハウス出荷の基本的な考え方

vinyl house

ハウス栽培の戦略は時期をずらして出荷するか、回転数を稼ぐかのどちらかです。

時期ずらしの場合

時期ずらしは先ほど書いたように、加温なしでもできますし、加温ありだと冬場にきゅうりやナスを出荷することができます。供給の少ない時期にいかに出荷できるか、また、価格を高いまま維持できるかがポイントになります。

回転数を稼ぐ栽培方法の場合

回転数を稼ぐ、とは1年間で810回、種まきをして収穫するといったサイクルを回すということです。ホウレンソウや小松菜、ニラ、ネギ、カブといった葉物野菜をいかに回数多く出荷するか、という戦略です。

1年のうちに何回も種をまいて耕すので、大変そうに思いますが失敗した時のリスクヘッジが効いています。病気が出た、虫にやられた、天候不順で…などといったトラブルに見舞われても、すぐに取り返しのつく作型です。

営業戦略としても、取引先の意向を取り入れやすいです。1回のサイクルが短いため、実験的に育てることもできますし、ダメだったらすぐに切り替えることができるので、提案する営業がしやすいことがメリットです。

水耕栽培・溶液土耕栽培、植物工場

 

これらは初期投資が数千10,000円から2億円に及ぶため企業が参入することが多く見られます。

何を作るかと言うよりもどう効率的に供給していくのかそのための必要な設備はどんなものかこの点が鍵となります。

土耕栽培、土作りにこだわりのある方は植物工場といわれるこれらの栽培方法を否定しがちです。栄養素の点や食味の点から土から作った野菜のほうが優れているだろうと。

数年前までは栄養素、食味ともに土で作った野菜の方が明らかに優れている時代がありましたが、年々その差が埋まってきているといわれています。

設備メーカーの開発努力やおいしい・機能性野菜の数値化の技術から「良い野菜」というものを明らかする動きが進んでいます。

もしかすると10年以内に水耕栽培と土耕栽培の野菜の栄養素・食味などの価値観が逆転するかもしれませんね。

まとめ

経営について、考えることは極めてシンプルです。

基本は栽培作物、商品単価、10アール当たり収量、経費をざっくりと見込み、

何を、いくらで、誰に販売するかということに尽きます。

みなさんに感じていただきたいのは、思ったより必要な数字が少ないという点、数字が簡単に集められるという点です。

ネットはもとより、実際の現場レベルでもだいぶ情報が集まっているので、そちらを利用されることをおすすめします。