土壌分析の重要性は理解してるけど、
実際どの数値をみればいいかわからないよ~~
そんな方向けの記事になります。
この記事では土壌分析でここだけチェックすれば大丈夫というポイントと、その活かし方についてまとめました。
・土壌分析チェックするべきポイント
・用語の解説と畑への活かし方
・理想の土壌にするための方法
土壌分析の重要性や注意点についてはこちらの記事をご覧ください。
土壌分析・土壌診断は良い土作りには欠かせません。この記事では土壌分析のメリットや注意点、あなたの畑が劇的に変わる理由についてまとめています。
こちらも参考になります。
土壌分析チェックポイント1 仮比重
理想的な土は、水はけがよく水持ちの良い状態の団粒構造の土といわれます。
この理想的な状態を数値で表したのが仮比重1.0の土です。
土・水分・空気の3要素からなる土壌。それぞれ固相、液相、気相といいます。
そもそも土の重さを表現する言葉として3種類の”比重”があります。
比重とは
容積重(比重)
仮比重
真比重
です。
容積重(比重)とは、全体の重さ(土・乾物+水分)÷全体の容積(土・乾物+水分+空気)
仮比重とは、固相(土・乾物)の重さ÷全体の容積(土・乾物+水分+空気)
真比重とは、固相の重さ÷固相の容積
となります。
この仮比重が土壌分析をチェックするうえで重要なポイントになります。
仮比重の大きい土は固相部分が多いため、水はけの悪い土です。
反対に仮比重の小さい土は気相部分が多いため、水持ちが悪い土になります。
このように土壌の3相構造を意識し、仮比重を理解すると畑の水はけや水持ちが数値化されます。
では仮比重の目標値とはいくらくらいでしょうか?
ずばり、仮比重は1.0を目指しましょう。
これより大きい数値の土は軽く、小さい数値の土は重くすることを目指しましょう。
仮比重を軽くするためには
・保肥力が高い
・保水性が良い
・水はけが悪い
粘土質の強い見た目の、仮比重の数値が1.3以上の重い土の特徴です。
仮比重を軽くするための対策としては、軽い堆肥を入れ、重い土に空気の通り道を作ります。
軽い堆肥とは容積重0.4ほど、仮比重0.2ほどの堆肥のことです。
この数値だと保水性・通気性・微生物を活発にする環境に優れています。
堆肥の仮比重がわからない、堆肥はコストが気になる、という方はモミガラの投入をおすすめします。
モミガラはとても軽いです。その軽い資材を重い土に投入することで、仮比重を下げるイメージです。
仮比重を重くするためには
・保肥力が低い
・保水性が悪い
・水はけがよい
火山灰土などのサラサラとした土など、仮比重の数値が0.6以下の小さい土の特徴です。
仮比重を重くするための対策はゼオライトを使い、有機物などの微生物のエネルギー源になるものが吸着しやすいような環境(=腐植)を作ります。
ゼオライトとは多孔質構造の粘土鉱物で、保肥力の増加効果があります。
農業用以外でも、住宅床下の湿気対策やペットの糞尿処理として使われています。
このゼオライトの多孔質構造がの吸着効果で、軽くてスカスカの土をもちもちの土にかえることができます。
土壌分析のチェックポイント2 C/N比
C/N比とは炭素と窒素の割合のことです。
施肥の際にはこのC/N比を意識しない施用をすると、土壌の微生物が大混乱します。
・C/N比が高すぎる→窒素飢餓による生育不良
・C/N比が低すぎる→病気が発生しやすくなる
稲わらやオガクズといったC/N比の高い資材(炭素の割合が高い)を畑に投入すると土壌にいる微生物は炭素を分解するために、土壌中の窒素をたくさん使います。
微生物が炭素の分解に窒素を使い、土壌中の窒素が減るため、畑の作物は窒素が足りない状態(=窒素飢餓)に陥るため、注意が必要です。
反対に、C/N比の低い資材(窒素の割合が高い)を施用すると、炭素不足・窒素過多により根焼けや病原菌の増殖が引き起こされます。
最適なC/N比とは?
作物にとって最適なC/N比は10です。
C/N比10の土壌を目指すための施肥設計を心掛けましょう。
この範囲の中だと、土壌の微生物やミミズが最も活発に活動するといわれています。
微生物やミミズが活発に活動すると、土がふかふかになり団粒構造の形成を促します。
また、微生物群が多様化される環境を作ることで、土壌の病気の発生を抑えることができます。
作物に病気が発生したら、施肥する資材のC/N比を見直しましょう。
有機肥料の注意点
C/N比とは炭素と窒素のバランスです。
窒素は施肥によって割合を増やすことは可能ですが、炭素は微生物のエネルギー源としてどんどん使われるため、調節が難しいです。
そのため、C/N比15~20の堆肥を施肥し、窒素分を追肥で微調整して作物の根っこがC/N比10の状態で生育させることを目指します。
微調整するための肥料は有機肥料と化成肥料があります。
化成肥料の特徴として、炭素分を含まないという点があります。
有機肥料は炭素分も窒素分も含まれています。
そのため、有機肥料のみで土壌のバランスを整えることはほぼ不可能です。
こまめな土壌分析と、化成肥料での微調整で作物にとって最適な環境を作ることを目指しましょう。
土壌分析のチェックポイント3 CECと塩基飽和度
CECと塩基飽和度の解説です。
この2点を意識しないで施肥を行うとどうなるでしょうか。
一言でいうと肥料のキャパオーバーを起こすため、いろんな無駄が生じます。
肥料の無駄、作業の無駄や肥料流亡による地下水質の汚染をしないためにも、しっかりと理解しましょう。
CECとは?
CECとは、胃袋の大きさや、お店の広さと例えられます。
土壌の働きは養分をキープして、作物が吸収したいときに供給するという働きがあります。
お店の面積が広ければ広いほど、商品(栄養素)を並べることができるため、お客さんの要求(作物の根)に応えることができます。
養分をキープするお店は土壌でいうと粘土や腐植の複合体です。
粘土や腐植は表面にマイナスの電子を帯びているためカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、水素(H)などのプラスイオンを引き付けて保持します。
どれだけの量のプラスイオンを保持できるかの数値をCEC(塩基置換容量・陽イオン交換容量)で表します。
化学的な話はさておき、ここではCECが大きい=養分保持力が高いとだけ理解してもらえたら問題ないです。
また、CECが小さいと肥料を入れても保持するハコが小さいため、肥料が流亡してしまい無駄になってしまいます。
CECに応じた適切な量の肥料を施すことが重要です。
塩基飽和度とは
塩基飽和度とはCECの何パーセントが陽イオン(塩基)で埋まっているかということです。
CEC胃袋だとすれば、塩基飽和度は腹何分目か、ということです。
塩基飽和度60%とは土壌粒子のマイナスイオンの60%に石灰・苦土・カリが保持されていて、残り40%に窒素・水素が保持されている状態のことです。
塩基飽和度が異常に高いケース
雨は酸性だから放っておくと畑がすぐに酸性に傾く。だから石灰を施用しよう。
こんな話、聞いたことありませんか?
石灰の多用によってCECを超えるほどに塩基が多くなると、土壌溶液中にアンモニア態窒素が押し出されます。
そうすることで土壌の窒素濃度が高くなり、根っこが焼ける、野菜が苦くなるといった症状が出てしまいます。
畑のCECをしっかりと把握し、石灰・苦土・カリの塩基の残存量を把握してから塩基飽和度を計算し、塩基の過不足を掴みましょう。
最適な石灰・苦土・カリのバランスは?
塩基もバランスよく含むことが必須です。
石灰・苦土・カリの最適な割合は5:2:1です。
このバランスが崩れると、土壌中にはリンさんが含まれているのに作物が吸収できなくなり、病害虫が増える、病気になりやすくなるという症状が出ます。
土壌分析のチェックポイント4 pH
ホームセンターなどに売っているpH測定器で土壌のpHを測ったことがある方、いるかと思います。
pHが低いから焦って石灰を施肥したけど、効果があるのやらないのやら・・・こんな経験ありませんか?
pHの数値の意味、他の指標との関係を正しく理解し、正しい対処をしましょう。
pHとは
pHとは、土壌の水素イオン濃度をその対数の絶対値で表すもの、酸性~中性~アルカリ性を測る指標です。
0~14まであり、7が中性で低い数値だと酸性、高い数値だとアルカリ性を表します。
前述の石灰の過剰施肥、CECのキャパオーバーの施肥は、pHの数値だけを見た判断です。
酸性化が進む原因は土壌中の石灰・苦土などの塩基が減り、水素イオンが多くなることです。
水素イオンが増えるとアルミニウムイオンが溶かし出され、リン酸イオンと結合してリン酸を効きにくくしたり、鉄やマンガンを流亡させます。
酸性土壌の改良法
酸性土壌の改良法は今まででは石灰施肥が最善だと考えられてきました。
その方法だと、石灰過剰により土壌が締まることや塩基飽和度がさらに高まり、作物の品質が落ちる弊害がありました。
これからの酸度調整は土壌分析を行い、pHや塩基飽和度、CECを複合的に見て判断する必要があります。
塩基飽和度とpHはどちらも水素イオンの濃度、割合に関する数値です。
そのため、pHと塩基飽和度は比例関係にあります。
pHに異常値が出たら、土壌の塩基飽和度も併せて疑いましょう。
まとめ
土壌分析のポイントはこちらです。
・仮比重 1.0
・C/N比 10
・CEC・塩基飽和度 土壌性質による適正値
・pH 6.5~7.0
CEC・塩基飽和度は目標値に向かうというよりもCEC・塩基飽和度によって施肥設計を柔軟に変えていくことが必要です。
pHも育てる野菜ごとに変えていく必要があります。
重要なのはそれぞれが関係しあっているということ、施肥設計に根拠を持つことです。
より具体的に計算式や計算方法を知りたい方はこちらもどうぞ。